志摩観光ホテルの元総料理長であった高橋シェフとは同郷であったので、何度か同席をさせてもらう機会があった。
著書もかなりの量を読ませていただいてますが、料理の世界は深いですね。

「火を通して新鮮、形を変えて自然」との名言があるが、
高橋さんは若い駆け出しの頃、叔母たち海女が休憩する「海女小屋」に来ては、魚や貝の名前と調理法を聞いていたという。

海女小屋で焼く、アワビはそうれはもう絶品!
しかし素朴な、ただ焼くだけの料理は料理とは言えない、だが本当に美味しい。

ラ・メールでの鮑ステーキ・ブールノワゼットソースを添えは、志島の徒人海女が獲った「くろあわび」をつかう。
海女小屋を入った人でないとわからない究極のこだわり。

シンプルなこのひと皿に人々は魅了され絶賛した。

料理長を辞められてもう何年も経ってからのお話ですが、人としての必死さを学んだ気がします。
お客様の前に出す料理は「絶対に旨いだろう。どうだ!」と自信を持って出したという。
自分の仕事に対する誇りと自信を持ち、志摩の自然とそこに産するいい素材を活かしきった料理人だと思います。

そして、ぼそっと一言。
実は、今の女房と一緒になってから、家で食事したことがなかったんだと。
15歳から厨房で働き始め、常にストーブの前に待機していた。
ホテルマンはホテルに居てあたりまえ。
誰よりも包丁を握ったよ・・・・と。

その高橋さんが、大切に育てた志摩観光ホテルが伊勢志摩サミットのメイン会場になる。
我がことのように嬉しい。


*志摩の海人は、舟人(ふなど)と徒人(かちど)の2種類に分類される。
  舟人は夫婦海女ともいわれ、夫が命綱を担当し妻が潜水を行う、二人で行う。
  徒人は磯から歩いて海に入る。
  集団で船を使い漁場で海に入るサッパも船を使うが徒人に分類される。
  腰につけた鉛の重石によって分類されているのであろう。

三重県志摩市阿児町志島

*ストーブ前‥‥‥ストーブとは、ガス台とオーブンが合体した大きな調理器具のこと。
  ストーブの使い方が料理人の腕前を表すと言われる。


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冷たさに
透き通る青
冬の風
【まどか】