この世の中、この人生、人はすべからく絶対の確信を持って力強く歩むべしといわれる。
それはまことにそうだけれども、よく考えてみれば、
この人の世に、絶対の確信などあり得るはずがない。
持ち得るはずがない。

刻々に変わりゆくこの世の中、あすをも知れぬ人の世で、
神か仏でないかぎり、絶対にまちがいのない道など、ほんとうはないのである。
だからこそ、お互いに過ち少なく歩むために、あれこれと思い悩み、精いっぱいに考える。

その果てに、どうにもほかに道がなさそうで、だからこの道がいちばんよさそうで、
そう考えて、それでもまだ心もとないけれども、心もとないままではしかたがないから、
そこに勇気をふるって歩みつづけるのである。
みずからを励まし励まし歩みつづけるのである。

確信ありげに見えても、ほんとうは手さぐりの人生で、まことにつつましやかなものである。
たよりないといえばたよりないかもしれないが、
持てもしない絶対の確信に酔うよりも、
この心がまえで謙虚に歩むほうが、自分も他人も傷つくことが少なくて、
結局は最良の道になるのではなかろうか。


松下幸之助
今日読んだ「道をひらく」より




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